052-331-4461

9:00~12:00、13:00~18:00(土日祝を除く)

大型トラックの巻き込み事故を防ぐために運送会社が取り組むべきこと|弁護士が法的責任と対策を解説サムネイル画像

大型トラックの巻き込み事故を防ぐために運送会社が取り組むべきこと|弁護士が法的責任と対策を解説

東海クラリオン株式会社

東海クラリオン株式会社

2026年4月の道路交通法改正により、自転車に対する交通ルールの厳格化が進み、車道を走行する自転車への注意がこれまで以上に求められています。万が一、自転車と巻き込み事故が発生した場合、運転手には刑事責任が、運送会社には民事責任と深刻な経営リスクが生じます。しかし「注意して運転していた」という弁明だけでは、法的責任を免れることはできません。

本記事では、徳島県「巻き込み事故対策協議会」オブザーバーで交通事故の加害者弁護に豊富な実績をもつ島尾大次弁護士に、巻き込み事故の法的責任・経営リスク・事故防止に向けた取り組みについてうかがいました。運送会社の経営者・安全管理担当者の方に、ぜひご一読いただきたい内容です。


■ 監修・取材協力

島尾大次 弁護士
徳島県「巻き込み事故対策協議会」オブザーバー。交通事故の加害者弁護、企業法務に豊富な実績を有する。平成7年、東京大学法学部卒業。平成9年、弁護士登録。平成28年度、徳島弁護士会会長。平成29年度、四国弁護士会連合会副理事長。


歩行者・自転車との巻き込み事故が起これば「過失責任」は免れない

──島尾先生は徳島県の「巻き込み事故対策協議会」オブザーバーを務めていますが、徳島県ではトラックの巻き込み事故防止への意識が高いのでしょうか。

2021年に徳島県小松島市で、登校中の10歳の女の子が横断歩道を渡っている最中に左折してきた大型トレーラーにはねられて亡くなるという悲惨な事故が起こりました。交通事故全体の件数は減少していますが、トラックによる巻き込み事故の件数は減っていません。

こうした事故がこれ以上起こることを防ぐために、県内の運送事業者が集まって「巻き込み事故対策協議会」が設立されました。

──協議会の設立総会で、「巻き込み事故の法的責任及び同事故対策の意義について」と題した講演を行っていますね。

巻き込み事故の加害者は法律的な建前としては「過失責任」、その人自身に責任があって初めて法的責任が問われる形で、注意を怠らなかったことや過失がなかったことを証明すれば責任を免れるという規定になっています。

しかし、現実的には「結果責任」、つまり結果が発生すればそれに応じた責任を問われるのが実情です。なぜならば、過失がなかったこと=免責事由を証明することはほとんど不可能だからです。

──たとえばトラックの左折時に「死角があったから見えなかった」と弁明しても、その主張は通らないのですね。

仮に死角で見えないということであれば、それを認識した上で、危険があるということを前提に安全に走行しなければなりません。死角を確認しないで走行したこと自体が過失になるのです。裁判になれば、「安全対策装置を付ければ死角による事故を防げるということであれば、付けないで運行すること自体に責任がある」という発想になると思います。

──島尾弁護士はトラックの事故などさまざまな交通事故の弁護にあたってきた経験をお持ちですが、事故原因の検証にあたる中で見えてきたものはありますか?

法律家の立場から申し上げると、やはりドライバーの安全確認の不十分、あるいは思い込みなどの人的な要因が非常に大きいのではないかと思っています。事故を後から振り返ってみると、いろいろな過失が見つかるわけです。ただ、当事者本人は毎日、大型トラックを運転していてもなかなか過失のリスクにまでは思い至りません。

たとえば、「曲がる直前に確認をしたら左側に何も来ていなかった。だからまさか自転車が来るはずないだろう」と思ってしまっていたり。こうした過信が事故の大きな要因を占めているのではないかと思います。

道交法改正で自転車は原則車道通行へ──大型トラックへの影響とリスク

【2026年4月 道路交通法改正のポイント】

  • 自転車は原則として車道を通行
  • 自転車の信号無視・酒酔い・酒気帯び運転・携帯電話の使用などの行為に青切符(反則金)が導入
  • 自動車は自転車の側方を通過する際に十分な間隔(1m〜1m50cm程度)を取ることを義務化

──2026年4月の道交法改正で自転車の交通違反に青切符が導入されました。その背景や大型トラックドライバーへの影響について教えてください。

自転車と歩行者、自転車同士の事故で高額の損害賠償が認められる事案があったり、自転車乗車中の死亡・重傷事故で自転車側にも法令違反が多く見られる状況があり、自転車を車両として位置づけ、本来のルールに沿って規制することになりました。

規制の強化によって自転車は本来の原則通りに車道を通行しなければいけなくなるので、自動車は自転車の側方を通過するときに十分な間隔(1m〜1m50cm程度)を取ることを義務づけられています。

──今までは歩道を走る自転車も多く見かけましたが、車道を通行するケースが増えることで大型トラックドライバーの事故リスクは高まることが予想されますか?

車道を走る自転車はあまりゆっくり走っていると原付きバイクや他の自転車に追い抜かれてしまうので、歩道を走っていたときよりも速度は上がりがちです。歩道を走行していた自転車が歩行者を避けて車道に降りて走行することもよくあります。トラックの運転手にとって注意を払わなければいけない場面は増えてくると思います。

──自転車の中にもかなりスピードを出せるタイプのものもありますね。

トラックを運転している側からすると、注意を払って運転していても左後方の死角から急に自転車が近づいてくることが増えると思います。トラック側が交差点で先に左折の合図を出していたとしても、自転車が注意を払わずに突っ込んでくるケースも起こるかもしれません。

自転車に乗って走行している方が"事故の被害者になり得るリスク"への認識に乏しいと、いっそう危険性は高まります。たとえば前方を走るトラックが左折の合図を出していても、先にトラックを左折させて自分はその後から安全に行こうと考える方ばかりではないかもしれません。

今回の道交法改正では、自転車の信号無視や酒酔い、酒気帯び運転、携帯電話の使用などさまざまな行為が罰則の対象になりました。それだけ、自転車に乗っている方のマナーが問題になっているということです。それが車道を走るようになって、急にマナーが良くなるとも限りません。トラックと自転車の接触事故は死亡に至らなくても後遺障害が残ったりする可能性があります。トラック運転手の方はちょっとした不注意が悲惨な結果につながることを強く意識しておいてほしいですね。

巻き込み事故が発生したら運転手も会社も無事では済まない──法的責任と経営リスク

──大型トラックが左折時に自転車や歩行者の巻き込み事故などを起こして、被害者の方が死亡してしまった場合の刑事責任はどのようなものなのでしょうか?

刑事事件については過失運転致死傷罪に問われ、執行猶予がつく可能性は高いと思いますが、2年〜3年の有罪判決が下されることが多いです。スマホのながら運転などがあると、実刑になるケースもあります。

以前は業務上過失致死傷という言い方をしていましたが、危険運転の処罰をしなければならないということで自動車運転処罰法ができて、刑も重くなりました。自動車運転処罰法第五条では「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する」と定められています。

──民事責任としては運送会社も責任を問われることになるのでしょうか?

従業員がトラックで業務中に起こした事故に関しては、会社も責任を問われることになります。民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められていますが、運送会社は大型トラックの運転手を雇って収益を上げている「報償責任」があり、リスクについても応分に負担しなければなりません。法的には、事故が発生すると運送会社はほぼ間違いなく責任を負うことになります。

──大型トラックによる人身事故が起こると、被害者への賠償以外にも運送会社には大きな負担がかかることになるのでしょうか?

運転手の方が逮捕されて身柄を拘束されると、運んでいた積み荷が止まってしまうことになり、荷主への損害賠償の問題が発生することが考えられます。運転手が一人欠けてしまうことで、新たな人員の配置も考えなければならないですね。

それだけでなく、事故原因として運送会社に問題があったと疑われる場合には、運送会社も警察の捜査対象となり、会社に捜索や証拠の差し押さえに来られたり、運行責任者などが警察に呼ばれて事情聴取を受けることになります。事故の現場が会社から離れた場所であれば、そこまで出向いて対応しなければなりません。

──運送会社は大きなダメージを受けることになりますね。

会社に関するネガティブな評価が広まり、信用やブランド価値が低下して損失を被る「レピュテーションリスク」も無視できません。運送会社のトラックが事故を起こしたと報道されると、通常のメディアが会社名を報道しなくても、事故の映像に映ったトラックなどからSNS上で会社名を特定する人が出てきます。そこから、この会社のトラックは安全な運転を行っていないのではないか、運転手に過剰な労働を強いているのではないかという風評が立ってしまうことになります。

大きな事故が発生してしまうと、経営に重大な支障を及ぼし、場合によっては会社の存続にも影響することになりかねないのです。

運転手の注意には限界がある。運送会社がリスクを減らすために取り組むべき巻き込み事故防止策

──トラックの事故が運送会社の経営に及ぼす影響や、道交法改正で自転車との事故のリスクが高まる状況を受けて、運送会社はどのような取り組みを進めるべきでしょうか?

4月の道交法改正後にも、横断歩道を渡っていた歩行者や自転車に乗っていた人が左折してきたトラックにはねられて亡くなった事故が相次いで起こっています。運転手が歩行者や自転車に気づかず、巻き込んでしまったケースです。

交通事故の裁判を数多く担当してきて感じるのは、やはり人間の注意には一定の限界がある、悲惨な事故は誰にでも起こり得る可能性があるということです。

だからこそ、そうしたリスクを少しでも減らすためには、ヒューマンエラーを防ぐための仕組みが必要だと考えています。

徳島県の「巻き込み事故対策協議会」では、運送会社が協力してAIカメラを搭載した巻き込み事故防止装置の実証実験を行い、事故の防止に取り組んできました。全国的にも、巻き込み警報カメラシステム「A-CAM3」のような装置によって運転手の方をサポートする仕組みが広がっていくことを期待しています。

まとめ|運送会社が今すぐ取り組むべき巻き込み事故対策

島尾弁護士のインタビューから明らかになったのは、次の3点です。

  • 「死角があった」「気づかなかった」という説明では、法的責任を回避することは難しく、過失がなかったことを証明することはほとんど不可能。
  •  2026年4月の道交法改正を背景に、自転車の車道走行増加が見込まれ、トラック運転手にとって注意を払う場面も増えると思われる。
  • 事故が起きると刑事責任・民事責任に加え、積み荷の損失・捜査対応・レピュテーションリスクなど、運送会社の経営に深刻な影響が生じる。

人間の注意には限界があります。だからこそ、ヒューマンエラーを補う安全装置の導入が不可欠です。AIカメラを活用した巻き込み警報カメラシステム「A-CAM3」のような装置を導入することで、ドライバーへのリアルタイム警告が可能になり、事故リスクを大幅に低減できます。

「安全対策装置を付ければ防げた事故を、付けないで運行すること自体に責任がある」という法的判断が現実のものになっている今、安全装置の導入は経営判断としても急務といえます。

巻き込み警報カメラシステム「A-CAM3」の詳細・導入事例については、東海クラリオンまでお気軽にお問い合わせください。

A-CAM3について詳しく見る / お問い合わせはこちら

東海クラリオン株式会社
執筆者:東海クラリオン株式会社

一覧ページへ戻る

CONTACT

安全機器システム、
ドライブレコーダーなどの
ことでお困りなら
東海クラリオンに
お任せください