2023年10月より労働安全衛生規則が改正され、最大積載量2トン以上のトラックに昇降設備の設置が義務化されました。対象となる事業所では、「自社の車両は対象になるのか」「具体的にどのような対応が必要なのか」「違反した場合はどうなるのか」と頭を悩ませている担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、トラックの昇降設備義務化の概要や導入のメリットについて解説します。また、AIカメラなどを活用するトラックの安全装置全体の見直しポイントについてもご紹介します。
貨物自動車における昇降設備義務化の背景と法令改正のポイント
トラックの荷台からの転落・墜落事故はあとを絶たず、陸上貨物運送事業における労働災害の大きな割合を占めています。具体的には、荷役作業中の事故が全体の約75%にのぼり、そのうち約34%が転落によるものです。
▼荷役作業時の労働災害
画像引用元:厚生労働省『荷役作業における労働災害の発生状況』
こうした現状を受け、労働安全衛生規則が改正され、荷役作業時の安全確保を目的とした規制が強化されました。荷役作業はドライバーにとって日常的な業務であるため、少しの油断が重大な事故につながります。国もこの事態を重く見ており、安全な作業環境の整備を急務としています。
出典:厚生労働省『荷役作業における労働災害の発生状況』
義務化の対象となるトラックの基準(2トン以上への拡大)
今回の法令改正により、昇降設備の設置義務の対象が従来の「最大積載量5トン以上」から「最大積載量2トン以上」のトラックへと拡大されました。これにより、多くの運送事業者や建設業者が新たに設備の導入を迫られています。
また、昇降設備の設置だけでなく、テールゲートリフターを使用した荷役作業における特別教育(学科4時間・実技2時間)の義務化や、最大積載量2トン以上5トン未満の特定のトラックにおける保護帽の着用義務の拡大(安衛則第151条の74関係)など、安全対策がより一層強化されています。昇降設備とは、具体的にはステップや手すりなどを指し、作業員が安全に昇り降りできる構造であることが求められます。
出典:e-GOV法令『労働安全衛生規則』/厚生労働省『労働安全衛生規則等の一部改正のポイント』
昇降設備を設置しない場合の違反リスクと罰則
労働安全衛生法により、昇降設備の設置義務などに違反した事業者には「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。さらに、違反した労働者自身に対しても50万円以下の罰金が科せられるケースがあります。
▼労働安全衛生法の罰則の条文
画像引用元:厚生労働省『労働安全衛生規則等の一部改正のポイント』
万が一、設備不備の状態で転落事故が発生した場合、企業の安全配慮義務違反が厳しく問われます。労働災害が発生すれば、多額の損害賠償だけでなく、社会的信頼の失墜につながります。コンプライアンスの観点からも、早急な対策が必要です。
出典:e-GOV法令『労働安全衛生規則』/厚生労働省『労働安全衛生規則等の一部改正のポイント』
トラックに昇降設備を導入する重要性と現場のメリット
昇降設備の導入は、法令遵守(コンプライアンス)のためだけでなく、企業とドライバーの双方に多くの実質的なメリットをもたらします。安全な作業環境を整えることは、単なるコストではなく、現場の生産性向上やリスクマネジメントにおいて極めて重要な投資です。
荷役作業中における転落・墜落事故の防止
昇降設備を設置することで、アオリやタイヤに足をかけて昇降する危険な作業がなくなり、荷台からの転落や墜落といった労働災害を未然に防げます。
特に、雨の日や雪の日など天候不良時、あるいは夜間など視界が悪く足元が滑りやすい状況下であっても、滑り止め加工が施されたステップなどを利用することで、安全かつスムーズな荷役作業が可能です。事故が減ることで、ドライバーの身体的・精神的な負担も軽減されます。
労働環境改善によるドライバーの人材確保・定着
安全で身体的負担の少ない職場環境を構築することは、ドライバーの安心感につながり、従業員の満足度を大きく高めます。
人手不足が深刻化する物流・運送業界において、「安全に働ける会社」であることは採用活動においても大きなアピールポイントになります。高齢ドライバーや女性ドライバーが長く安心して働ける環境づくりは、人材の定着に直結する重要な要素です。
法令対応を契機に進めたい「車両安全装置」全体の点検・見直し
昇降設備の義務化は「停車・荷役時」の安全を確保するものですが、これをきっかけに「運行時」の安全管理体制全体を見直す企業が増えています。トラックの事故は、荷台からの転落だけでなく、走行中にも多くの危険が潜んでいます。
事故を未然に防ぐ高度な予防安全へとシフトすることが、これからの企業経営において求められています。
トラック特有の「死角」に潜む重大な事故リスク
トラックやトレーラーは車体が大きく、運転席からの死角が広いため、左折時の巻き込みやバック(後退)時の接触事故リスクが常に存在します。特に、左折時はミラーや目視だけでは十分な確認が難しく、事故につながるケースがあとを絶ちません。
さらに、2026年4月には自転車の交通違反に対しても「青切符」が導入されるなど、道路交通法の改正に伴う自転車のルール厳格化が進んでいます。自転車が原則車道通行となったことで、トラックドライバーの巻き込み事故リスクはこれまで以上に高まっています。
事故発生が企業経営に与えるダメージ
万が一、重大な交通事故や巻き込み事故などが発生した場合、自動車運転処罰法などにより刑事・民事・行政上の責任を問われ、企業は多額の損害賠償を負うリスクを抱えることになります。
さらに、事故情報が報道やSNSで拡散されることによる「レピュテーションリスク(風評被害)」は、企業の信用低下を招き、取引先からの信用を失えば事業継続にも影響を及ぼします。
これからの運送・物流企業には、「法令を守る」だけでなく「テクノロジーを活用して事故を未然に防ぐ」という積極的な予防安全体制が求められています。
関連記事:大型トラックの巻き込み事故を防ぐために運送会社が取り組むべきこと|弁護士が法的責任と対策を解説
AIテクノロジーで死角をなくす!東海クラリオンの安全運転支援ソリューション
現場の安全管理をさらに強化するためには、ドライバーの見落としやヒューマンエラーを補完する、後付けの安全装置の導入が効果的です。車載機器の専門商社である東海クラリオンでは、既存のカメラやモニターを活用し、トラックへスムーズに導入できる先進のシステムをご提案しています。
右左折時の見落とし・巻き込みを防ぐ『A-CAM3』
『A-CAM3』は、AI(人工知能)がカメラ映像をリアルタイムで解析し、車両側方に接近する歩行者や自転車、バイクを的確に検知して、インジケータとブザー音で即時にドライバーに警告するシステムです。
超広角レンズの採用により、最大5m×21mという広い検知範囲を持っています。ドライバーの目視やミラーでは確認が難しい死角をしっかりと見守り、重大な巻き込み事故を未然に防ぎます。ガードレールなどの道路設備に対する誤検知を抑え、本当に危険な対象物だけを知らせてくれるため、ドライバーのストレス軽減にもつながります。
後退時や右左折時の接触リスクを低減する『iBOX2.0』
『iBOX2.0』は、車両にすでに設置されている既存のバックカメラやサイドカメラのモニターをそのまま活用し、AIによる歩行者・車両検知機能を追加できるカメラ機能拡張ユニットです。
車両の死角や構内の危険を画面と音で発報し、車両ごとに検知範囲を設定できます。既存のシステムに後付けできるため、新たな設備投資を抑えつつ、バック事故や右左折時の巻き込み事故を強力に防止できます。「カメラをつけたのに事故が減らない」とお悩みの企業に最適なソリューションです。
全日本トラック協会の助成金活用による導入コスト軽減
『A-CAM3』は、全日本トラック協会の助成事業において「側方衝突監視警報装置」として助成対象製品に認定されており、購入代金の一部が補助されます。
このような公的な助成金制度と連携して導入を進めることで、企業は初期費用の負担を最小限に抑えながら、費用対効果の高い確実な安全対策を構築できます。
まとめ
トラックの昇降設備義務化への対応は、単なる規制対応にとどまらず、自社全体の安全対策を見直し、労働環境をアップグレードする絶好の機会です。荷役作業時の転落防止はもちろんのこと、運行時における左折巻き込みやバック事故などのリスクを排除するためには、人間の注意だけに依存しない仕組みづくりが不可欠です。
東海クラリオンが提供するAI安全運転支援機器は、ドライバーの死角を確実に補い、企業を事故のリスクから守ります。全日本トラック協会の助成金制度などを賢く活用しながら、最新の安全装置を導入し、従業員の命と企業の社会的信用を守る「労働災害・交通事故ゼロ」の現場を実現してみてはいかがでしょうか。

